「彼方からの呼び声」シリーズその2


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詳細
 2004年小説版作成。当時のままのため誤字訂正等はありません。
 REGESTというゲームの番外編です。ゲーム本編とは設定が異なります。

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 水晶掘の祭壇

 西に財宝があるとしたら、何とかして手に入れて。
 北に秘宝があるとしたら、こりゃまた何とか手に入れて。
「欲しい物があるの」

 冒険とは、その一言から始まる。
 頑張れ自分。くじけるな自分とガナティアは心の中で誓った。
 彼女は娘の身の上であり、この人は母親の身の上であり、命令無視をすれば 鉄拳炸裂という四文字熟語が待っている。
 それ故、私はこうして母親の言葉を聞くだけ聞き、とりあえずうんと返事をする のだ。もちろん、うん以外の返事は出来ない。

 これからの任務が決まりました。

 はあ。自分で言っておいてため息が溢れ出る。
 私の母はすさまじいパワーでもって命令無視に関しては攻撃を仕掛ける。
 そして、それを恐れる私は母親の望みを叶え続けさせられる。
 いい加減にしてくれと思う悪循環の中、手渡された地図を片手に私は旅に出る のだった。
 ちなみに、地図にはこの辺りにあるような気がすると大きな丸が囲われている。
 その丸の大きさは、人間の標準身長よりもでかい。

 トッカの町は、水と緑に溢れる素晴らしい町だ。
 だのに何故、私の心はこんなにもすさんでしまったのか?
 こうしてやいやい言っている間にも路銀は減ってしまう。
 一つの大きな原因は、前の町にはアンティークアクセサリーショップがあったと いうこと。
まあそれは置いといて、宝探しの前にちょいと金稼ぎをしなくてはならんだろう。
 今は冬間近、生活の知恵である熊やウサギさんは冬眠中なのだから、私もそろそろ働かなくてはならない。
 流れるような銀髪と長身のうら若き、花の17才にとって、働くということはプライドに反すること。
 ま。ちょいちょいと、そこらのおっさんを捕まえてかすめとれば良いことなのだが、 それは時々しかやらないので、プライドに反しながらも仕事を探す私。
「お前も仕事探しか・・一緒だな」

 幻聴。今のは幻聴と思っていても、消えてくれないのが人生だ。
 その優男ウルランは、元々警備隊長という偉い役職に就いていたのだがヘマをしでかし、無職になってしまった。
 警備隊長時代は素敵だったか、といえばそうではない。
私の記憶が確かならば、 言葉遣い以外は現在と変わらず、いつも通りなトチリ魔である。
 まあ、それはどうでもいいのだが、問題は私にたかるヒモ男が、彼なこと。
「私の記憶が正しければ、たしか前の町に置き去りにしたはず・・」

「あ。偶然さ。よくあることだろ?」

 へらへらとウルランは陽気に笑う。
切り返しの早さだけはプロ並である。
「普通は無いけど。
それより、仕事探しってあなた何をするつもり?」

「実は決まったんだ」

「あっそう。じゃあこれで・・」

 逃げだそうとする私のマントをウルランはがっちりと掴む。
 離せ、私は孤独な一人旅を愛するんだ! 「何? まだ何かあるの」

「非常に言いにくいんだが」

「じゃあ言わないで」

 私かきっぱり断ると、ウルランは神妙な顔つきになる。
「まあ、そう言わずに聞いてくれ。
実はこの町のランフォスさんという 商人から仕事をもらったんだが」

「良かったねえ。じゃ」

 再び逃亡しようと思う私だが、ウルランは相変わらずマントを手にしていた。
 どうせ、やっかいな話に決まっている。
だが、渋々私は聞く体制になった。
「3日間だけの仕事なんだが。なんとまあ、二人以上での警備でないと雇わないそうだ。で、頑張ってくれ。少しの間だ」

「は?」

「いやー、都合が良かったな。ちょうど仕事探してたんだろ?」

 う。そうつっこまれると文句も出せない。
 たしかに今夜の夕食代ぐらいしか持ち合わせが無いし、ある意味ラッキーだ。
 けれど、ウルランがまともな仕事を持ってくるだろうか? 「ちなみに依頼料はおいくら?」

 恐る恐る、恐怖の質問をしてみると、ウルランは嬉しそうに微笑む。
「聞いて驚け! 日給3000Cだっ!!」

「騙されてんじゃぁぁぁぁぁ!!」

 ウルランが天高く舞い上がる。
 1C(クラウトコート)あれば、上等のパンが一つ買える。
 つまりは、3000もあれば貴金属のかなり良いのを買えてしまう。
 怪しい、怪しすぎる。
 3日働けば、馬車が馬付き御者付き買える計算だ。
 どこの世界にそんな物好きが居る? 「あなたね。
それってどう考えても、ものすごく命の危険がある仕事か、 騙されてお金をもらえない仕事よ!」

「そっ、そうなのか?」

「でもってまさか。その、すでに契約書の中には私の名前をご記入済みで、 前金いただき済みだったりとか?」

 ウルランは首を縦に振り続ける。血祭り決定と決めつけた私は、最後の晩餐にと一番高そうな食堂でお昼を取ることにした。
 無論、ウルランのお金でだ。

「別に怪しい人じゃなかったけどな」

 ウルランは煮物のでっかいヤツをほおばりながら私に問いかける。
 彼は見た目より食べるたちらしい。
「どんな内容の仕事なの? 詳しく話してくれる」

「っえ。たしか、ランフォスさんが領主から頼まれて水晶の採掘をするらしいんだな。
 それで、掘っている間に何か出てきたときのために私らが必要とかで、盗賊対策じゃないのか?」

 私は頭を抱えた。
 まずい。しかしある意味、まずくない。
 条件、マザーは水晶掘の燭台を取ってこいと言っていた。
 しかし、いつも何かの厄介者がまじって死ぬほど苦労させられる。
「絶対。変な生き物が生息しているわね」

   今まで幾度と無く繰り広げられていたドタバタを思い起こし、私はちょっぴり涙する。
 たしかに超財宝・秘宝だったさ、ドラゴンやら、オクトタナモスやら、サイコキクロプスやら・・。
「へ? 何でだ」

 ウルランは、どういう意味だときょとんとした目で私を見上げる。
 答える気も無い。ま。とりあえずやるだけと私は、ランフォスさんの家を 訪ねることに決めた。何とも言えない気分が襲う。

「ドロボウだぁぁぁぁぁっ!!」

 水晶掘の至る場所から、こんな悲鳴があふれ出す。
 分かっている。分かってるのに来た私が馬鹿だったのだ。
 ランフォスさんの案内の元、私達は採掘所に訪れた。思えば、私の分の前金を 渡され、安心してしまったのが悪かったのだろう。
 そして、たどり着いた途端これである。
 ちらっと見てみれば、当のランフォスさんは姿を消している。
 はかられた。
 私達しか居ない採掘場で、責任者不在。
 その間に。もしくは以前から、ランフォスさんが水晶掘の水晶を隠し持った としても、犯人扱いを受けるのは私達。いっくら水晶が無くなっても、 盗んだのは私達なのだから、ランフォスさんは取り放題である。
「大変だ! ドロボウが出たらしいぞ!!」

 うろたえるウルランを叩き落とし、私は鼻息を荒くする。
「バカね。ランフォスに騙されたのよ。
私達、これから水晶泥棒として 役人に捕らえられるの。あなたのせいで!」

「へ・・?」

「へ。じゃないでしょ、立派に騙されたのよ! 流れ者の私達なら犯人扱い されたとしても弁護してくれる人は居ないし、犯人としては最適でしょ。
 その間に、ランフォスは好きなだけ、水晶採掘よ!!」

 はぁぁぁぁぁぁぁぁ!! という悲鳴がとどろく。
 ヤツめ、凄い才能だ。今まで気が付かなかったとは。
「どうするんだガナティア!」

「どうも、こうも無いわ。あなたのせいで、こうなったんでしょ」

 念のため、私は入り口の戸をチェックしてみる。
 予想通り。厳重に鍵がかけられているようで、ちょっとの衝撃で開くような ドアではなさそうだ。ご大層に。
 とりあえず、私は祭壇にあった燭台を懐にしまい、辺りを見回した。
 まあ、見事に出口は無い。仮に出られたとしても、大勢の役人に追いかけられるだろう。
 あー。ムカムカさせてくれるわね。
ランフォス!!  私は何だか、殺人計画を練っている気分になる。
「契約書が問題ね」

 逃げようにも。
言い訳をしたとしても、契約書に名前が書いてあるし、 顔も覚えられているから簡単に手配されるに違いない。
 最近は、腕の良い絵師が多いのだ。
「仕方ないわね」

 私は思いきり息を吸い込むと、ドラゴンよぉぉと叫び始める。
「何を始める気だ?」

「あなたもやって、ドラゴンよぉぉぉ。
助けてっ!!!」

「ど、ドラゴンが出たぞ!!!」

 ウルランは、棒読みで叫ぶ。演技とか下手そうである。
 数回ほど叫び、私はもういいわとウルランに合図した。
 深く深呼吸して、ゆっくりと呪文を紡ぐ。

 洞窟の影に隠れし者。
 水の中より生まれし、醜き怪物よ。
 永久の、契りの名の下に、汝をも滅すその力を授けたまえ。
 購うことを許されぬ醜きものよ、汝の力を召喚せし。

 印を結ぶと、両手にドラゴンを意味する十字の印が浮かび上がる。
 周囲に黒い煙が立ちこめ、砂埃が舞い散る。
「ガナティア・・・。これって、もしかして」

「そう。ブラックドラゴン」

 ブラックドラゴン。幾千の戦士達が立ち向かい、そして破れていった魔物。
 偶然と幸運で彼を手に入れた私は、さっそくのご利用である。
 ランフォスの家を破壊して、契約書を奪ってね。
 と伝えると、ドラゴンは奇妙な笑いをしてどこかへと消えていった。
「さあ。
水飲み場もあることだし、契約通り3日間働きましょう」

 リュックを地面に置き、私はのんきに昼食を取り始めた。
 名誉を傷つけられた恨みは恐ろしい。
 わき起こる悲鳴達を私は無視することに決めた。

 そして3日後、ようやくやって来れた役人達は、私達を領主のお屋敷まで運ぶ。
 もちろん、水晶泥棒としてである。けど、こっちには契約書があるのだから、 何を言ったとこで私達の勝ち。契約通りのお金も入ってウハウハである。
「採掘現場を騒がせた者達を連れて参りました」

 恭しい礼をすると、兵士達は壁際に配置する。
 どうしてまあ、領主にカッコイイおじ様が座っていないものなのか。
 領主、つまりロードは中年を通り越したおっさんだった。
 私はちょっぴり、涙を流す。
「そなた達がやったと兵は言っているが、どうなのだ?」

 領主の質問に、私達は堂々と契約書を見せた。
 水晶を私達が持っていないのだから、犯人扱いは早すぎるし、 領主にも信じてもらえることだろう。
常識で考えれば、私達は閉じこめられていた 可哀想な美少女と変なおじさんなのだから。
「それがどうした?」

 は? 領主はとりあえず内容の確認はしたが、興味は無いようだ。
 まさか。
「私は、そのような契約を交わした記憶がございません。
その者達は、 無断で現場に入り、水晶を奪った張本人であります」

 出てきたのは、全身を包帯でドレスアップしているランフォス。
 こ、こいつ。すっとぼける気である。
「と。申しておるのだが・・」

 領主は疑いの眼差しを私達に向ける。
 くぅぅ。領主に何としてでも信じてもらわなくては。
「領主様。そいつの言っている事は嘘です!」

 ウルランの言葉にも、動揺の色すらランフォスは見せない。
 相手は信頼されている領主。
余裕なのだろう。
 だったら、こっちにも考えがある。
「どちらが正しいか、天は知っております。
領主様、 一つ気になっていることがあるのですが、どうしてランフォス氏は あんなにもボロボロなのですか?」

「それは、先日現れた魔物に襲われたからだ。
不幸にも、 ランフォスは住まいと財産を失ってしまった」

「なるほど。しかし、それは水晶が奪われたからでしょう」

「と言うと?」

 私の言葉に、領主は始めて興味を持ってくれた。
 ランフォス。
これからが言葉の取引よ。
「私達は契約通りに、祭壇をお守りしておりました。
その間に魔物が現れた というならば、これは間違えなく天から下された罰。
魔物は水晶と燭台を 奪った本人を襲ったとは考えられないでしょうか?」

 さり気なく、燭台も付け加えたとこがみそである。
「ふむ」

 さすがに、天罰を出されたらたまらない。領主は考え込んだ。
「そんなはずはございません! 偶然が重なったのです」

「では、どうして何も犯していないランフォス氏の家に、魔物が襲って来た のでしょうか? 不正をしていないならば、魔物は彼だけを襲ったりはしません。
見たところ、町もこの屋敷も無傷のご様子。
罪無き者達を傷つけなかった魔物が、 どうしてランフォス氏を襲ったのですか?」

 おー。と感嘆のため息が屋敷中に溢れた。
 こうなると分かっていてやった確信犯、私の勝ちである。
「そ、そんなはずは・・・・。そうか、貴様が命令して契約書を私の家から 奪っていったのだな!!」

「あ」

     人々の声が重なる。と同時に領主は兵士を呼びつけた。
「決まりだな。ランフォスを牢に入れろ!!」

 素早い動きで、兵士達はランフォスを拘束して牢へと運び出す。
 途中で騙されるなとか言っていたが、後の祭りである。
「二人とも申し訳なかった。魔物は水晶の守り神だったのであろう・・。
 後ほど、ランフォスからは契約通りの金額と、私からもわずかばかりでは あるが、迷惑料を支払おう。本当にすまない」

「ありがとうございます!」

 歓喜のあまり、私とウルランは手を取って踊り出す。
 一気に大金ゲット。
 そして、前金をもらっていると話していないので、そのままそっくり私達に お金が入るのだ。いやー。人生ってちょろい、ちょろい。

 ドサ。

「ん? 何だそれは・・」

 だくだくと、冷や汗が溢れるのを私は感じた。
 踊りのショックで落ちた燭台は、領主の目の前で転がる。
「い、いやぁぁ。何でもないんですよ。あはは」

 素早い動きでそれをしまうと、私は手のひらを触ってドラゴンを呼び出す。
「じゃ、そういうことで失礼します!!」

 相変わらず、逃げ出すのは私もウルランも早いようだ。
 かき回してとだけ命じたので、何かが起こりはしないだろうが、 まあ。一言で言うなら後は知らない。
 この国を飛び出した私達は、全速力で出来る限り遠くの国へ向かう。

 最後に。
 あとでお母様に、めちゃめちゃお尻を殴り飛ばされたことを付け加える。
 ・・・・もう、こんな生活から離れたいっす。
 終わり
  


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