第六章 沙織事件とエルフ設立コンビの解消
ドラゴンナイト2でゲーム大賞、DEJAでシナリオ賞を受賞し続くはFOXY2とドラゴンナイト効果でファンの数は増え続け会社は大きくなる。 軌道にも乗り続け躍進はしていたが、ユーザーの期待とは別に内情はボロボロ、現エルフ社長の下田篤氏と後のシーズウェア社長になる藤田氏、そして前章にも出てきた竹井氏と大所帯となった会社は一軒家からビルへと移った。 これまで中立の立場を保っていたはずの金尾氏は自社会社を設立、エルフからは離れた。 ムードメーカーだった金尾氏が居なくなり、エルフ社内は荒れていく。 パソコンソフトを万引きした高校生によって美少女ゲームが警察に知られるようになり、わいせつ図画として取り締まりを受けた。 モザイクという表現の規制はあくまでもメーカーの自主規制によって成り立っていたので、共通のルールも無く、裏技で外れたりゲームは無修正でも発売される状態というお粗末な業界だった。 各社は自主回収を始め、会社を突然潰すソフトハウスも現れた。 発売予定のゲームは黒塗りのモザイクを追加するなどの対処を施し、あるいは下着を書いて誤魔化し、何が何でも摘発されるのだけは避けようと、必死の防衛戦が始まる。 さらに翌年の1992年。 DEJA2 雀JAKA雀 天神乱魔 ドラゴンナイト3まで全年齢版が発売され、18禁と全年齢に分かれた独自レーティングがエルフに敷かれる。 もっともエルフのゲームは修正するほどの描写は無く、ほとんど無駄な努力とユーザーの失笑を買い全年齢版は売れ残った。 追い打ちをかけたのが、現在はエヴァンゲリオンで話題のガイナックス謹製「電脳学園シリーズ」はっちゃけあやよさんをオマージュしたこの作品はプリンセスメーカー効果もあって大ヒットしたが、そのおかげで、わいせつ図画としても大ヒット摘発! 控訴しようにも却下や敗訴の嵐で、大人たちはさらに美少女ゲームを非難し続ける結果になった。 |
新時代の幕開け
美少女ゲームは悪。 それを一気に塗り替えたのは、NECアベニューだった。 ゲーム雑誌では非難を浴び、各メーカーは抗議し、PCエンジンそのものをバカにされ叩かれに叩かれた。 これに対しNECは、 「美少女ゲームであっても面白いゲームは面白い、面白い物は評価される」 と、批判を物ともせず電脳学園がわいせつ図画指定された翌月の1992年08月。 18禁ソフトのドラゴンナイト2を、家庭用に移植発売する。 神谷明に銀河万丈、島本須美に久川綾、田の中勇に塩沢兼人。 という誰もが知っている最高の声優陣で最高の形での全年齢向け家庭用移植。 フルボイスで構成されたPCエンジン版ドラゴンナイト2は、世の子供たちにエルフ製ゲームの面白さを伝えた。 影に隠れて遊ぶだけ、見つかったらわいせつで摘発される、女の子の裸を見るためだけのゲーム。 そう言われ続けた18禁のゲームソフトは「ゲーム性があり面白いから遊ぶ」物へと変わっていき、人々はえっちなパソコンゲームに魅了される。 ドラゴンナイト2は、美少女ゲームの存在そのものを猥褻な物から面白いゲームへと変化させた。 混乱を避けるように阿比留氏はミンクを立ち上げてエルフを去っていった。 |
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