パソコンショップ高知の歴史


 
 ALICE(アリス)
 発売 1984年
 機種 PC88/FM7
 定価 8000円
  

・オールコマンド入力のADV。不思議の国のアリスをモチーフにした可愛らしい作品。英語の知識も必要。

その2「ロリータ野球拳と武市氏の登場」


 マイコンユーザーが自作したゲームを販売する流れは、高知県でも沸き起こった。
 それまで本体の販売をメインにしていた「パソコンショップ高知」は、常連客が作ったゲームプログラムを買い取り、オリジナル作品として店頭に並べ始める。

FM7 PAC-MAN(パックマン)[テープ版]

 初期は、本家の作品を音楽の音程やタイトルだけ変えたグレー作品が多かったものの、オリジナルより描写速度の早いプログラミング技術を評価され、少しずつマイコン世代の間で評判が広まっていき、高知で一番安い店をキャッチフレーズに店舗は拡張されていった。

 「パソコンショップ高知」の名から一文字ずつ取った「PSK」のブランド名は、少しずつ浸透していき、単なる粗放品ではなく、ゲームとしての楽しさを与えてくれるお店となり、マイコンショップとしては珍しく機種別のアセンブルソフトを発売し、ソフトの購入者が新規ゲームプログラムを作り上げるという連鎖を生んでいく。

FM7/8 I/Oソフトウェア・ライブラリ:エディタ・アセンブラ

 ※アセンブラとは
  難しいプログラム言語をGoogle翻訳的に直すソフト。
  逆アセンブラは、暗号化されたゲームの中身を見る方法。
  もちろん、主な目的はエッチなCGを見るための知識である。




 そんな中、医学への道を歩んでいた一人の青年が、愛車のヤマハを走らせて「パソコンショップ高知」の扉を開く。

FM8ハードFM-8本体(MB25020)

富士通が作り出した初のマイコン「FM-8」を手にした武市氏は、高性能のカラーグラフィック表示と8色表記のカラフルさに魅了され、初めてのイラストをCRTモニター上に描いていった。

当時流行していたハドソンの「野球拳」をモチーフに、8色カラーで描かれた美少女のゲームは1982年に「パソコンショップ高知」の新商品として迎えられ、小遣い稼ぎのはずが店で一番の売り上げを記録する事となり、一躍クリエイターとしてのスターダムに乗り始める。

MZ-700 ローディボール・野球拳

 最新のマイコン機種とプログラムを手にした青年が次に望むことと言えば、エロだった。
 大きなモニター画面にカラー表示と言えば、スケベなイラストを大画面で見たい。そんな欲望に溢れた人々の思いも虚しく、世の中に広がっているエッチなゲームと言えば、棒ラインで描かれた女体や官能テキスト程度の物。

 手に入るエロスと言えば雑誌やビデオテープ程度で、キーボードを叩きながら悶々とした気分を過ごしている。


※PSK探検隊本文より抜粋、今見ても可愛いイラストである。

 そんな中で、アニメや漫画のようなかわいい女の子のイラストがCRTモニターに表示され、しかも脱いでくれるとしたら、マイコン世代の青年たちは万札を片手にショップへと走り出すだろう。

マンガ ドラゴンクエストへの道 / 滝沢ひろゆき


 当時のエロゲーへの探求心の凄まじさ、いかにクリエイター達がエッチなイラストを求めていたかがよく分かる。

コミック雑誌レモンピープル 1986/12

 折しも1982年は、「漫画ブリッコ」や「レモンピープル」が創刊された年でもあり、いわゆるロリコンブームの波に乗って、「ロリータ野球拳」は剛速球を打ちまくり、高知に倉が建って高知城が新築されそうな勢いで、売れて売れて売れまくった。

PC-8801/8801mkII ロリータ・シンドローム

 追従する形で、大手メーカーまでもが「エロゲーム市場」に参戦し、本とビデオテープだけだった成人向けの新たな夜のお供に「アダルトゲーム」が追加された。
 何しろ、勉強のためであるとでも親に伝えれば何とかなる上に、モニターさえ隠してしまえば立派なプログラムを学んでいるとでも言い切れる。

 世界初のいわゆる男性にとって夜のお供に出来るゲーム「ロリータ野球拳」は、ある種の聖典として崇められ、作者の武市を始めとする「PSKと愉快な仲間たち」はマイコン雑誌の顔として長らく君臨し、脚光を浴びることとなった。

PC-8801ソフトLolita(ロリータ)2 [下校チェイス]

 翌年に発売された続編「Lolita(ロリータ)2 下校チェイス」は、地方発信のマイコンゲームにも関わらず、武市氏の描きおろしパッケージの人気も有って、一時期は並み居るコンシュマーゲームを蹴落とし、売り上げランキング一位を獲得し、それはもう売れて売れて売れて売れまくった
 何しろ、コンシュマー作品を普通に作れる超絶プログラマー(お店の常連客)が己のエロを見せつけるために、女体の高速描写に死力を尽くしているのである。

一般PC雑誌月刊アスキー 1984年11月号

 マイコン雑誌のみならず、様々な媒体がPSKの活躍を記載し、高知と言えばカツオから、高知と言えば「PSK」な地方の四国からの逆襲に、コンシュマー業界は押される。

 だがその活躍も長くは続かず、やがては足摺岬の崖下に飲まれていく事となった。
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