月姫と美少女ゲーム史
武内氏の友人、桐原小鳥氏との合同本。 後に、Fateでも桐原氏は凛のペンダントなどのデザインで参加されている。 個人誌「まひるのゆめ」では、 武内氏の超力作、半裸を晒す遠野志貴の悩殺描きおろしイラスト が収録されているので、未読の方は是非是非見て頂きたい。エロイ。 実は桐原氏の絵柄に惹かれて、月姫を知った中の一人だったりする。
「月姫日和」 |
・男性向一般同人誌<<月姫>>月姫日和/竹箒
| ・男性向一般同人誌<<月姫>> まひるのゆめ/少女標本 |
第3章「制作開始、メイドさん最強伝説!」
話を少し前に戻そう。 「空の境界」の主人公を男子に置き換え、吸血鬼ものとして企画が進んでいた月姫。 奈須氏が思い描くシリアスなストーリーに加えられた、アダルトゲームという未知の要素。 真祖の吸血鬼「アルクェイド」 鬼との混血の末裔な妹「遠野秋葉」 教会の異端審問官で学園生活の癒し「シエル先輩」 三人のヒロイン達をメインに置いた30日間の壮大なる超絶長いノベルゲーム。 戦闘シーンに特化し、ボーイミーツガールな命のやり取りをし、あとエロシーンも織り交ぜつつ、壮大なるボスへとナイフ一本で立ち向かっていく少年の物語。 渋々その意見を了承すると、今度は、 告知フロッピーが作られ、シナリオやデザインが進んでいくうちに、割烹着の方が好きだったため片方の琥珀さんは割烹着姿の女中へと大きく変更していく。 その妥協案として、武内氏には翡翠嬢を好きなように調教して良い事になり、企画は進んでいく。 しかしながら、双子のメイドさんの一人を取られてしまった武内氏の情熱は凄まじく、メイドに対する流儀やシナリオに対する注文が殺到し、気が付くと「翡翠ルート」なる新チャートが起動した。 1ヒロインで24時間、総プレイ時間100時間。 相手を殺すか、殺されるかの絶望な戦闘シーン満載の30日間を体験できるビジュアルノベル。 と、当初は半年間での短期制作を予定していたものは、膨大な量のシナリオな超絶ボリュームフロッピーディスク容量オーバーへとジョグレス進化していったが、こちらも武内氏の愛のある説得により却下され、30日の物語は三分の一の10日間へと短縮された。 やがては、超重要キャラという名目で「鹿さん」や「犬さん」といった敵キャラクターの立ち絵は仕上がっていき、翡翠のイベント絵も増えていき、気が付くとメインヒロインのアルクェイドよりも立ち絵枚数が多くなっていった。 軌道修正しようにも、書いてしまったグラフィックは搭載せざるを得なくなり、月姫は美少女ゲーム寄りに完成へと向かっていった。 |
豆知識「当時の美少女ゲーム業界」
怪奇ノベルゲーム物からして一転、萌えゲーと呼ばれる世界を作り出した本作は、美少女ゲームのみならずコンシュマへと進出。 コミケなどのイベントも「To Heart」一色となり、それに乗っかる形でビジュアルアーツからは新ブランドのKeyが発足。 これからは、コンシュマとのメディアミックス時代。 美少女ゲームとしての在り方や存在価値でさえ虚ろになっていき、クリエイター達もこの現象に警鐘を鳴らし続けた。 そして始まったのが、Yahoo!運営のヤフーオークション。 安価で中古の商品が手に入るようになり、公式通販や中古売買で手にしていたはずのゲーム達は小売りを挟まないユーザー同士のやり取りでの入手が可能となる。 パソコンで簡単にコピー可能な「美少女ゲーム」は違法販売品の温床となり、8800円払ってやって手に入ったはずの作品は、データ販売という名の違法ディスクを安価で入手出来た。 パソコン通信や、限られた月額制の個人サイトの運営時代とは異なり、メールアドレスさえ指先一つで簡単に作れる時代への変化。 まだ出来たばかりの新しい仕組みに対して、NOと明確に伝えられる整備もろくになく。便利になりつつあるインターネットの世界は、酷くアンダーグラウンドなものになっていった。 コピーディスクへの対策、違法ファイルへの監視、データ販売の取り締まりと、美少女ゲーム業界は90年代末期に素早いIT対応を求められるようになっていく。 市場の受け皿は少なくなっていき、マルチのグッズはガンガンのガンガンに売れまくっていく。 時代を先取ったLeafの一人勝ちかと思いきや、待っている内情は火の車だった。 |