月姫と美少女ゲーム史
宙出版による初のアンソロシリーズ。表紙は武内氏の描きおろし。 驚くほどに売れに売れまくり、30冊近くも様々なシリーズが作られた。 タイアップのテレカの他にも、えっちなアダルト本アンソロも有ったりする。
「月姫アンソロジー」 | ・その他コミック月姫 アンソロジーコミックス(1)
| ・ゲーム・PC系テレホンカード 計5名「月姫」 |
第6章「お祭りディスクと夏の終わり」
2001年1月。メッセサンオーを先行に、月姫のWeb通販は開始した。 やがて、とらのあな、あきばお~、まんだらけと委託通販先は増えていき、不具合のある初版ディスクはイベントや公式通販にて修正ファイル入りのCDを付属する事となり、既に購入済みの方には一枚100円にてイベントなどでの頒布を実施した。 大手委託通販の開始により、ユーザーが増えたことで二次創作やファンアート。同人誌の制作に乗り出すファンで溢れかえり、同人ゲーム作品でありながら、公式に二次創作基準を設けるという異例の現象が起こる。 ・当時の二次創作ガイドライン http://www.typemoon.org/main.html そして、当初は月姫完成後に解散を予定していたTYPEMOONは、ユーザーへの御礼を込めてもう少し活動を続ける事を決意し、ファンアートと追加ストーリーで満載の「月姫お祭りディスク」の制作を告知する。 2001年4月には、お祭りディスク用のユーザのファンアートやSSの募集が始まり、我こそはと競い続けるファンは、ペンを片手に掲載への願いを込めた。 前章の事件で絶望したLeafファンは、痕に似た作風の「月姫」を追い求めるように通販に殺到し、委託通販の在庫は即完売となった。 通常の三倍の量で押し寄せた人波は、様々な委託店舗の店頭にて「月姫完売です」のビラが飾られるようにまでなり、次々に在庫を求めるユーザーが難民となって押し寄せた。 しかし、増えすぎたファンの人口は抑えきれず、委託店舗の店頭には「月姫入荷待ち」のビラが並び、公式掲示板は荒れていく。 初の月姫オンリー同人誌即売会「月姫祀~秘初~」まで、TYPE-MOON公認にて開催され、100スペース募集のところ200以上集うなど大好評にて幕を閉じ、現代まで続く月姫同人イベントの真祖となった。 東方紅魔郷 / 上海アリス幻樂団 ユーザーによる月姫SSの制作は千本単位の投稿数となり、ある意味ではネット小説の先駆けとなる。 そして、2002年9月22日。アニメ化の告知をきっかけに、TYPE-MOON公式掲示板はサポート板以外は閉鎖となり、有志ユーザーが運営する「アンオフィシャル掲示板」へと誘導することになった。 抑えきれなくなったファンの波に押される形で、TYPE-MOONは商業化への道を決断した。 |
淘汰されていく美少女ゲーム業界
月姫の発売により、ユーザーからの非難の的となったのは美少女ゲーム業界だった。 コンシュマー化すらしておらず、ネットで話題になっていっただけの「同人ノベルゲーム月姫」 突然の無名同人サークルからの黒船到来に、たった一本の月姫という大砲で全面降伏をせざるを得なかった美少女ゲーム業界。 数多あった美少女ゲーム雑誌までもが売り上げを落とし、いくつかの雑誌は幕を閉じる。 黒船月姫の到来により、企業としてユーザーが8800円という金額を出していいと納得できる作品作りが求められるようになり、力のない小規模ソフトハウスは姿を消していく。 美少女ゲーム業界は終わったという声も囁かれ、クリエイター自身の引退やコンシュマーへの転身の動きも進んでいき、制作以前に有能な人材が多大に流出した。 エロくて安くて面白いを見事なまでに実現し、未だにシリーズ化され続けるほどの人気を誇る。 それまで美少女ゲームに興味がなかったファン層を引っ張り出し、更なる発展の道に大きな活路を見出した。 |